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米サンズ社撤退の衝撃 日本のカジノ誘致は「これで詰んだ」の見解

カジノニュース

5月12日、米国のカジノ大手ラスベガス・サンズ(ネバダ州ラスベガス)が日本へのカジノ進出断念を発表した。サンズのシェルドン・アデルソン会長はトランプ大統領の就任式のために500万ドルを寄付した人物。日本政府のIR(カジノを含む統合リゾート)推進もアデルソン会長から頼まれたトランプ大統領が安倍首相に要請したためと目されている。

ラスベガス・サンズは30年近くも日本進出を狙っており、最終的には神奈川県横浜市の山下埠頭に的を絞ったが、これを断念したインパクトは大きい。撤退理由として日本のIRライセンスが10年と短く、投資が回収できないためと報じられているが、実態はどうか。横浜へのカジノ・IR誘致に反対を続け、サンズの動向を注視してきた横浜港運協会の幹部は、サンズ撤退で日本のカジノ誘致自体が終わったと見ている。

「アデルソン自身はサンズのHPで公式に撤退を表明したわけですから、これで日本のカジノ誘致は終わったと分析しています。日本に投資をする余裕はないんです。もともとアデルソンからトランプ大統領、安倍首相という流れで筋道をつけ、トランプが攻撃している中国のカジノ業者『500.com』の関係者を狙い撃ちするように逮捕までしてきた。それなのにサンズが日本でカジノから手を引くとなれば、もはやIRをやる意味が米国、つまり米国商工会議所にはありません。サンズが抜けて、中国特別行政区(香港・マカオ)のメルコやマレーシアのゲンティンが日本でカジノを許されて漁夫の利を得るとなったら、トランプ大統領も怒るでしょう。ラスベガスのカジノ業者のために日本でIRをやることにしたわけですから」

アデルソンによる日本断念の発表は、5月14日に開かれた年次株主総会の直前だった。マカオ、シンガポール、ラスベガスでカジノを展開する同社の2020年1―3月四半期の純収益は前期比の約51%減、営業利益は93%減とズタボロ。そのような中、ラスベガスではカジノ従業員、料理や清掃を行う労働者たちの力が強く、サンズも従業員に給与を支払い続けている。

ラスベガスが所在するネバダ州では3月17日からカジノの営業を中止にした。6月に再開予定だが、カジノはこれまでどおりとはいかない。ネバダ州も健康と安全管理に慎重であり、従業員や客の生命安全のための感染防止が求められる。昨年9月に日本撤退を表明したシーザーズ・エンターテインメントも、スロットマシーンやカードゲームの設置距離、客の人数制限や見物客の禁止、チップやカードの消毒や交換など健康と安全のための措置をとることを発表。カジノビジネスは収益が下がる一方でコストはかかっていく。

■富裕層は「オンライン」へ移行

前出の協会幹部は続ける。

「カジノに入り浸っていた富裕層はオンラインカジノ、オンラインギャンブルへ流出しています。その道がいったんついてしまうとカジノが復活しても、オンラインで十分だとなるでしょう。サンズ自体はゲーミング業者の中でもっとも優等生で、1、2カ月営業しなくても大丈夫なくらい現金を持っている。しかしコロナで株価も大幅に下落して自己資本も減少した。株価は持ち直してきていますが、金融界はカジノ業界に今後も融資して大丈夫かと不安になっている。サンズはここで優等生的に撤退したほうが金融機関から別の評価を引き出せます」

コロナ第2波の懸念やオンラインテクノロジーの急成長もあり、3密業種の典型であるカジノビジネスの先行きは見えない。イベントも然りで、あらゆる面から見てカジノIR業界に厳しい情勢だ。一方、港運協会を主体につくられた横浜港ハーバーリゾート協会などでも山下埠頭再開発計画も考え直していきたいという。

「横浜の港運業界は幸い、“人を相手にしていない物流”ですので、今のところ前年比で12、13%減程度です。今後の景気後退にもよるでしょうが、物流はゼロにはならないしっかりとした仕事だとコロナで再認識しました。山下埠頭の再開発計画では協会は観光や国際展示場に走りましたが、山下埠頭の再開発はどういう方向性がいいのか抜本的に見直していきたい。ホテル建設や観光業をすすめるにしても3密、不要不急は避けなければならないし、国際展示場も3密の塊です。ショーケースをつくるなどの工夫が必要になるでしょう。この機会に国際展示場のリーダーシップをとっていきたい。そもそも鳥インフルなど5年に1回、感染症の問題は起きてきました。新型コロナはそのなかでもひどかったわけですが、そのたびに社会のルールも変わっている。それらを前提とし、未来を予測してきちんとしたものを示していきたい」(港運協会幹部)

カジノIRの業者選定は来年の1月から7月とされる。いまが誘致の前のめりを修正できる好機というわけだが、日本は生かすことができるのか。

(取材・文=平井康嗣/日刊ゲンダイ)

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